茜町BOOKS

絵本とかエッセイとか

2020-01-01から1年間の記事一覧

WEB絵本『女中奉公(金子文子)』第16巻

伊藤は三日にあげず店に来て、信仰友だちである店員の山本や家人の誰彼に、宗教上の話をして帰って行くのであった. が、その頃は試験が近づいているのにパンに追われて勉強も碌にできないことをかなり苦痛に病んでいるらしい様子であった. Mr. Ito frequen…

WEB絵本『女中奉公(金子文子)』第15巻

「ありがとうございます.私にとっては、それに越したことありません.けれど」と私は、この伊藤のことを話して「そうすると伊藤さんに背くこととなるのが心苦しいんで・・・」と渋った. "Thank you! That's best for me. But ..." I told her about Mr. It…

WEB絵本『女中奉公(金子文子)』第14巻

弟の銀ちゃんは二十四、五だったが、家じゅうで一番几帳面なしかしケチな男だった. まだ独身で、家でぶらぶらしていたが、人のいないところでは兄嫁に抱きついたりキスをしたりして、小心な奥さんを困らせていた. 妻にはどうしても兄嫁以上の美人をもらう…

WEB絵本『女中奉公(金子文子)』第13巻

秋原さんの世話で私は、浅草聖天町の仲木という砂糖屋に奉公することとなった. この家には五十四、五になる夫婦と、若夫婦と、若夫婦の子供が2人に、弟が2人のほかに、店員と女中とが各々一人ずつ、それに私を混ぜて都合11人の家族が住んでいた. I got…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第12巻

こうして私は、神に仕え、人に奉仕した. けれど私はその酬いを得なかった. 私はもう三日も食べないでいた.そこでまた新しい職業を求めてまわったけれど、その職業すらも与えられなかった. Thus, I served God and people. But no reward was given to me…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第11巻

簡易食堂で私は、時たま伊藤と一緒になった. 伊藤はやはり、夜間だけ車夫をしていたが、あがりは少なかった.それでも私の困っている時には自分の食を減らして20銭30銭と私に持って来てくれた. I often saw Mr. Ito at the snack bar and shared a tab…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第10巻

だがそれにもかかわらず私はもうどうにもこうにもならなくなっていた. そこでふと思いついて、冬の衣類を2、3枚風呂敷に包んで質屋の暖簾をくぐった. But nevertheless, I was living in extreme hardship. Then, an idea unexpectedly came to me. I wr…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第9巻

そして、かねて硝子戸越しに目星をつけておいた団子屋へ飛び込んで、2皿の餅菓子を食べた. 朝から1食もとらない空腹を充たすには不足だったが、でも、それで幾分かは元気づいた. After that, I ran into a tea parlor. I had my eye on the parlor befor…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第8巻

けれど、品物を取り出すひまもなく、きっぱりとツッケンドンに私は断られた. 「せっかくですが、いま手がふさがっていますから」 手が塞がっている? 物もらいと私は間違えられたのだ! But I had no time to take the goods out. She rejected me. "Sorry!…