茜町BOOKS

絵本とかエッセイとか

シリーズ

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第6巻

引き上げは大概10時頃だった それから私は湯島まで12、3町をテクテクと歩いて帰るのであるが、家に着くのはほぼ11時過ぎだった.そしてその頃にはもう大抵の場合、家のものは戸を締めて寝ているのだった. I usually closed my stall at around 10 o'…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第5巻

隣のお爺さんは面白い親切な人だった. いつも酒で顔を赤くほてらしていたが、酒の気がきれると「姐さんすまないがちょっと見ていてくんな」と私に自分の店を任しておいてどこかへ姿をかくした.その間に爺さんは近くの酒屋へ駈け込んで、コップ酒をあおって…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第4巻

伊藤は私に、湯島の新花町に間を借りてくれた. それから、彼の知り合いの粉石鹸屋から3、4円分の品物を仕入れてくれた.私は早速、その粉石鹸を持って夜の露店商人に変わった. Mr. Ito arranged a rental room for me. It was in Shinhanacho town of Yu…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第3巻

私は何だか、じっとしてはいられないような気がして来た. 何かしら私の頼るべきものがあって、それが私を手招きしているように私には思われた.そうして私は、何だか訳の分からぬ力に引きつけられて行くのであった. Somehow, I began feeling that I could…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第2巻

私は聖書なんか読むどころでなかった. 不安な思いばかりが胸の中を往来した. 穴の中へでも引き込まれるような心細さがヒシヒシと迫ってきた. I couldn't bring myself to read the Bible. My anxiety just kept growing in my heart. Loneliness was comi…

WEB絵本『露店商人(金子文子)』第1巻

白旗新聞店を出たのは、もう夕方であった. I left Shirahata newspaper sales agent. The evening had already come. さていよいよ、そこを出はしたものの、出るだけで準備がまだ出来ていないうちに無理に追ん出されたのであるから、第一その行き場所がなか…

素数を判定する為のちょっとしたアイデア(ベータ版)

《はじめに》 対象読者:整数論(素数)に興味のある人 与えられた数が素数であるかどうかを判定するための素数判定式を考案したので紹介します. ただし、2と3は判定できません.取り敢えず、この二つの素数は例外とします.まあ、今更2と3が素数かどう…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第10巻

その花の鎖の端を両手でしっかりと握って静かに湖の底へ沈んで行きました. ―――空の真ん中に懸かったお月様を仰ぎながら・・・ Holding an end of the flower chain by her hands tightly, Memie calmly sank into the bottom of the lake. She was looking …

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第9巻

ミミはオヤと思って辺りを見まわしました. 見ると、ミミは最前のまま湖のふちの草原に突っ伏して、花の鎖をしっかりと抱きしめながら眠っているのでした. 今迄のはスッカリ夢で、待っていたお月様は未だようように昇り掛けたばかりの所でした.そうして湖…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第8巻

その間を飛び違い入り乱れる数知れぬ夜光虫の光り. それは世界中が金襴になって踊り出すかのようでした. ルルととミミは抱き合ったまま、夢のように見とれていました. その前に数限りない御馳走が並びました. Rays of the countless noctilucas were pas…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第7巻

湖の御殿の真珠の屋根は、月と星の光りを受けて見る見る輝き始めました. The pearly roof of the Palace of the lake began to shine rapidly reflecting the lights of the moon and the stars. 瑠璃の床、青玉の壁、翡翠の窓、そんなものが皆それぞれの色…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第6巻

そうして、もしや兄様がそこいらに、いらっしゃりは仕舞いかとソッと呼んで見ました. 「ルル兄さま・・・」 けれども広い御殿のどこからも何の返事もありません. 遥かに遥かに向うまで続いている銀の廊下がピカピカと光っているばかりです. ミミは悲しく…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第5巻

「あら、ミミちゃん.こんな所で花の鎖を作っててよ.まあ、奇麗な事.そんなに長くして何になさるの」と大勢のお友達がミミの周りに集まって尋ねました. ミミは夜の明けぬ内から花の鎖を作り始めていたのですが、こう尋ねられますと淋しく笑いました. Man…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第4巻

ただ独りで湖のふちへ来て、真黒く濁った水の底深く沈んでしまいました. Ruroo came to the lakeside alone. And he deeply sank in the black and muddy water. 村の人が心配していた悲しい事がとうとう来たのです. ミミは独りポッチになってしまったので…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第3巻

その日はちょうどお天気の良い日でした. 地には色々の花が咲き乱れ、梢や空には様々な鳥が鳴いて、眩しいお天道様が白い雲の底からキラキラと輝いていました. 村の人々は、お爺さんもお婆さんも大人も子供も、みんな奇麗な着物を着て、ルルが作った鐘のお…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第2巻

そうして、ルルとミミのお父さんが身を投げると間もなく、湖は又もとの通りに奇麗に澄み渡ってしまったのでした. それから後、この村のお寺の鐘を造る人はありませんでした. 夜明けの鐘も夕暮れの鐘も、または休みの日のお祈りの鐘も聞こえないまま何年か…

WEB絵本「ルルとミミ(夢野久作)」第1巻

昔、或る国に水晶のような水が一杯に光っている美しい湖がありまして・・・ Once upon a time in a country, there was a beautiful shiny lake filled with crystal water. ・・・そのふちに一つの小さな村がありました. そこに住んでいる人達は親切な人ば…

WEB個展「種田山頭火(柿の葉、銃後)」

『柿の葉より7句』"Persimmon's Leaves" 風は何よりもさみしいとおもうすすきの穂 "Nothing is so lonely as the wind," the ears of pampas grass think. からむものがない蔓草の枯れている There is nothing to twine around, and so, a vine has withere…

WEB絵本「お天道さん金ん綱」

Once upon a time in a village, there lived a mother and her three children. 昔々ある村に、母と3人の子とが住んでおりました. The mother had the children stay home. And she went to a temple for worship. 母が3人の子に留守番をさせて、寺参り…

WEB絵本「御辛労の池」

むかし肥後国の八幡村で、御社の近くの古池の水をさらえて、池の魚を捕ろうとしたことがありました. Long long ago, people of Yawata village of Higo province tried to catch the fish of the old pond near the village shrine. So, they were drawing …

WEB絵本「雀と啄木鳥」

昔の昔、雀と啄木鳥とは二人の姉妹であったそうです. 親が病気でもういけないという知らせの来た時に、雀はちょうどお歯黒を付けかけていましたが、直ぐに飛んで行って看病をしました. それで今でも頬っぺたが汚れ、嘴も上半分だけはまだ白いのであります…

WEB絵本「海月骨無し」

大昔、竜宮の王様の御妃がお産の前になって、猿の肝が食べて見たいという、珍しい食好みをなされました. 竜王はどうかしてその望みをかなえて遣りたいものと、家来の亀を呼んで、何かよい考えはあるまいかと尋ねられました. Long long ago, the queen for …

WEB絵本「夢を買うた三弥大尽」

むかし日向国の三弥という大金持ちが、まだ貧乏な旅商人であった時、夏の日に仲間の者と二人づれで、或る山路を越えて寂しい高千穂の村へ入って行きました. Once upon a time in Hyuga province, there lived a millionaire. His name was Mitsuya. When Mr…

WEB絵本「春の野路から」

昔々ある所に、貧乏な一人の爺が住んでいました. 毎日毎日働いてやっと暮らしを立てていました. Once upon a time, there was a poor Old Man at a place. He worked everday and scraped a living. 今日は卯月の八日だから、一日だけ家でゆっくりと休もう…

WEB絵本「蟹淵と安長姫」

むかしむかし隠岐島の元屋という村に、年とった一人の木こりがありました. Once upon a time, there was an Old Woodman in Motoya village of Okinoshima island. 或る日、安長川の奥に入って、滝の後ろの山で木を切っていましたが・・・ One day, the Old…

WEB絵本「牛方と山姥」

昔々ある一人の牛方が、沢山の塩鯖を牛の背に積んで山の在所へ売りに行く途中・・・ Long long ago, an Ox Driver was going to a countryside beyond hills for selling a lot of salted mackerel. The mackerel had been packed on his ox. ・・・高い大き…

WEB絵本「猿と蟇との餅競走」

Long long ago, a Monkey encountered a Toad in a hill. 昔、ある所の山の中で猿とヒキガエルが出逢ったそうであります. The new year's holidays were coming soon. Spirited sounds of pounding steamed rice were heard from several places in the vil…

WEB絵本「電報(黒島伝治)」後編

Gensaku received a tax notice from the village office. But the 28th of the month was Sunday. So, he drew money from the bank on the 29th and went to the village office to pay the tax. 村役場から、税金の取り立てが来ていたが、丁度二十八日が…

WEB絵本「電報(黒島伝治)」中編

The exam finished. In the day when he was supposed to be back, Okino went to meet him at the station. 試験がすんで、帰るべき筈の日に、おきのは、停車場へ迎えに行った. There were a maid of the headman's family, the wife of a soy-sauce facto…

WEB絵本「電報(黒島伝治)」前編

"Gensaku's son has gone to a city." "His son will take an entrance examination for a public junior high school." Such a rumor was spreading all over his village. 源作の息子が市の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまっ…