WEB絵本「異世界霊異記、超巨大パンダの件」
或る年の春、出羽の国は男鹿半島の遥か沖合に超巨大パンダが現れたり.
瞬く間に、浜辺に近づきけり.
遂には、上陸す.
田畑を次々に踏み荒らしたり.
さらには、家々を悉く踏み潰したり.
さらに又、樹々を残らず踏み倒したり.
而して、海へ戻りける.
超巨大パンダの通りし跡、絵も言葉も及よばれね.
旅の私度僧、その惨状見るに忍びなしと思いたりて、全国を廻りて勧進し、而して小判1000両を集めたる.
私度僧、小判1000両を民百姓の救済の為と云いて、出羽の国衙の官人へ手渡したる.
国衙の官人、謝辞を述べ受けとりたると雖も、欲に目が眩みたりて私的流用を目論見たる.
これを知りたる出羽の国司、一族郎党を引き連れたりて、国衙へ押し寄せたる.
官人と国司、小判1000両を山分けたりて私腹を肥やしけり.
民百姓へは1文たりとも渡らざりけり.
それより8年が経たる頃、私度僧、再び出羽の国を訪れたりて見廻したりけるが、惨状に変わる処なかりけり.
野アザミ、黙々と天に向かいて、芽を伸ばすばかりなり.
(了)
―― あとがき ――
WEB絵本「異世界霊異記、超巨大パンダの件」
著者:茜町春彦
架空の動物が登場するファンタジーです.古文漢文調の文体で書きました.
投稿サイト「パブー」で公開した作品です.こちらに移植しました.
初出:
「リトルプレス梅桃02」2014年5月15日発行