―― まえがき ――
題名:正多角形および星形一筆書と素数判定法(ベータ版)
著者:茜町春彦
概要:自然数Nが素数であるか、合成数であるか、を判定する方法を解説します.
素数を判定する目的において、正多角形である必要はなく、普通の多角形でOKなのですが、作図が簡単なので正多角形を使用しました.
(テーマは幾何学ではなく、整数論です)
―― 解説のための準備 ――
《正多角形の各頂点に名前を付けて識別する》
まず、正多角形のどれか1つの頂点を一筆書の始点に選び、A0と呼ぶことにします.
そして、A0から反時計回りに1番目の頂点をA1、2番目の頂点をA2,3番目の頂点をA3、4番目の頂点をA4・・・、i番目の頂点をAi、と呼ぶことにします.(本書では、反時計回りに頂点を巡って行くことにします)
したがって、一巡、二巡、三巡およびそれ以降に於いて、各頂点は複数の名前を持つことになります.
《始点と終点》
一筆書は始点から書き始めて、必ず始点に戻って来ると仮定しています.
つまり、始点と終点が一致すると云う事です.(証明は行なっておりません)
《一筆書の方法》
始点から等間隔で頂点を巡って一筆書を行なう事とします.
例えば、頂点を2番目づつ巡るなら、A0→A2→A4→A6→A8→A10と巡る事となります.
3番目づつ巡るなら、A0→A3→A6→A9→A12→A15と巡る事となります.
―― 一筆書の実例、01 ――
《実例について》
正5角形と正8角形を例にとって、一筆書の手順を幾つか示します.他の正多角形も同様に考える事とします.
《正5角形:2番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を2番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A2→A4→A6→A8→A10の順で、星形の一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして5と2が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、02 ――
《正5角形:3番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を3番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A3→A6→A9→A12→A15の順で、星形の一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして5と3が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、03 ――
《正8角形:2番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を2番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A2→A4→A6→A8の順で、正方形の一筆書が出来ます.
この場合、経由しない頂点が残ります.8と2は互いに素ではありません.
―― 一筆書の実例、04 ――
《正8角形:3番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を3番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A3→A6→A9→A12→A15→A18→A21→A24の順で、星形の一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして8と3が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、05 ――
《正8角形:4番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を4番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A4→A8の順で、一本の対角線を往復します.
この場合、経由しない頂点が残ります.8と4は互いに素ではありません.
―― 一筆書の実例、06 ――
《正8角形:5番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を5番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A5→A10→A15→A20→A25→A30→A35→A40の順で、星形の一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして8と5が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、07 ――
《正8角形:6番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を6番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A6→A12→A18→A24の順で、正方形の一筆書が出来ます.
この場合、経由しない頂点が残ります.8と6は互いに素ではありません.
―― 一筆書の実例、08 ――
《正8角形:7番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を7番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A7→A14→A21→A28→A35→A42→A49→A56の順で、正8角形の外周をめぐる一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして8と7が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、09 ――
《正8角形:8番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を8番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A8であり、始点がそのまま終点となります.
この場合、経由しない頂点が残ります.8と8は互いに素ではありません.
―― 一筆書の実例、10 ――
《正8角形:9番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を9番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A9→A18→A27→A36→A45→A54→A63→A72の順で、正8角形の外周をめぐる一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして8と9が互いに素であることに気付きました.
―― 一筆書の実例、11 ――
《正8角形:10番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を10番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A10→A20→A30→A40の順で、正方形の一筆書が出来ます.
この場合、経由しない頂点が残ります.8と10は互いに素ではありません.
―― 一筆書の実例、12 ――
《正8角形:11番目づつ》
始点A0から反時計回りに頂点を11番目づつ巡り一筆書を行なってみます.
すると、A0→A11→A22→A33→A44→A55→A66→A77→A88の順で、星形の一筆書が出来ます.
この場合、全ての頂点を経由しています.そして8と11が互いに素であることに気付きました.
―― 実例から予想を行なう ――
《一般化してみる》
一筆書を『正N角形の始点A0から反時計回りに頂点をP番目づつ巡り一筆書を行なう』と一般化してみます.
これと、前述の実例から次のような予想が出来ると思います.
・ 一筆書が全ての頂点を経由するならば、NとPは互いに素である.
・ 経由しない頂点が残るならば、NとPは互いに素ではない.
(証明は行なっておりません)
―― 素数判定法 ――
《正N角形:P番目づつ》
Nが素数であるか合成数であるかを判定するために、前述の予想が正しいと仮定すると次の事が云えると思います.
まず、正N角形を考えます.
つぎに、N未満の全ての素数の積を求めます.
(2×3×5×7×11×13×17・・・)
その積をPとします.
(P=2×3×5×7×11×13×17・・・)
そして、正N角形の始点A0から反時計回りに頂点をP番目づつ巡り一筆書を行ないます.
その結果、一筆書が全ての頂点を経由しているならば、NとPは互いに素であると考えられるので、Nは素数である.
経由しない頂点が残るならば、NとPは互いに素ではないので、Nは合成数である.
この判定法の適用例を以降に示します.
―― 適用例、01 ――
《正7角形:30番目づつ》
7が素数であるかどうかを判定するために、まず7未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5=30
そして、正7角形の始点A0から反時計回りに頂点を30番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A30→A60→A90→A120→A150→A180→A210の順で星形の一筆書が出来ます.
この時、全ての頂点を経由しているので、7と30は互いに素と判定します.
よって、7は素数である.
―― 適用例、02 ――
《正8角形:210番目づつ》
8が素数であるかどうかを判定するために、まず8未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5×7=210
そして、正8角形の始点A0から反時計回りに頂点を210番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A210→A420→A630→A840の順で正方形の一筆書が出来ます.
この時、経由しない頂点が残るので、8と210は互いに素ではないと判定します.
よって、8は合成数である.
―― 適用例、03 ――
《正9角形:210番目づつ》
9が素数であるかどうかを判定するために、まず9未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5×7=210
そして、正9角形の始点A0から反時計回りに頂点を210番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A210→A420→A630の順で正三角形の一筆書が出来ます.
この時、経由しない頂点が残るので、9と210は互いに素ではないと判定します.
よって、9は合成数である.
―― 適用例、04 ――
《正10角形:210番目づつ》
10が素数であるかどうかを判定するために、まず10未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5×7=210
そして、正10角形の始点A0から反時計回りに頂点を210番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A210であり、始点がそのまま終点となります.
この時、経由しない頂点が残るので、10と210は互いに素ではないと判定します.
よって、10は合成数である.
―― 適用例、05 ――
《正11角形:210番目づつ》
11が素数であるかどうかを判定するために、まず11未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5×7=210
そして、正11角形の始点A0から反時計回りに頂点を210番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A210→A420→A630→A840→A1050→A1260→A1470→A1680→A1890→A2100→A2310の順で正11角形の外周をめぐる一筆書が出来ます.
この時、全ての頂点を経由しているので、11と210は互いに素と判定します.
よって、11は素数である.
―― 適用例、06 ――
《正12角形:2310番目づつ》
12が素数であるかどうかを判定するために、まず12未満の全ての素数の積を求めます.
P=2×3×5×7×11=2310
そして、正12角形の始点A0から反時計回りに頂点を2310番目づつ巡り一筆書を行ないます.
すると、A0→A2310→A4620順で一本の対角線を往復します.
この時、経由しない頂点が残るので、12と2310は互いに素ではないと判定します.
よって、12は合成数である.
(了)
―― あとがき ――
この本はパブーで公開した電子書籍、幾何エッセイ『正多角形および星形一筆書と素数判定法(ベータ版)』を加筆修正したものです.